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 19世紀フランス文学を代表する小説家オノレ・ド・バルザックは1799年生まれ、1850年没でした。つまり、51歳の若さで亡くなっていまして、いや、参った、私なども今年で50歳なので、やれやれ、もうすぐバルザックの年齢に追いつくじゃんという感じです。

 フランス文学を代表すると書きましたが、バルザックは生前にはその乱れた生活故に批評家から攻撃される事も多く、友人のヴィクトル・ユーゴー(『ノートル=ダム・ド・パリ』『レ・ミゼラブル』など)が国民作家として広く愛され大いなる名誉を獲得していた状況に比較すると、かなり不遇の生涯だったと言えます。

 しかし同時代の作家からは絶大な支持を集めてもいました。

 バルザックは貴族を気取って「ド」とつけていますが、貴族ではありません。『ボヴァリー夫人』で有名なフローベールのように資産家でもありません。まさに筆一本、猛烈に小説を書くまくった、小説家の中の小説家というべき存在でした。

 今回の旅で、私が紹介したい作品は、1846年に発表された『従妹ベット』です。ナポレオン三世による2月革命が1848年ですから、その2年前、つまり、7月王政=オルレアン朝末期の頃です。小説内での時代設定は1838年で、7月王政の安定期(と考えても良いでしょう)に位置しています。

 では、以下に紹介を。

 

〇『従妹ベット』(1846年)バルザック

内容)

 老いても尚女遊びのことしか考えないユロ男爵の妻アドリーヌはいつも悩まされていた。そんな夫に愛人を取られた成金男から、夫への仕返しのために誘惑されたりもする。男爵夫人には結婚適齢期の娘もいるのに、夫の放蕩で持参金もままならない。

 そんな生活が乱れ切った没落貴族の一家には、夫人の従妹にあたるリズベットという同居人がいた。男爵夫人が48歳にして尚美貌の持ち主であるのに対して、5歳下のリズベットは美しいとは言えない見た目で、若い頃には随分とアドリーヌに嫉妬をしたが、真面目に働き貯蓄をして誠実に生きていた。そんなリズベット=従妹ベットには生き甲斐もあった。若く美しいが貧乏な青年藝術家のパトロンになっていたのだ。彼の生活を援助することにリズベットは喜びを感じていた。

 ところが、ある時、アドリーヌの娘オルタンスはベットがかこっている青年藝術家の存在に気がつき、その美貌に魅了され彼を誘惑してベットから奪ってしまう。オルタンスもまたアドリーヌの美貌を受け継いでいたのだった。

 誠実さの欠片もない連中がその美貌を武器に放蕩、恋愛遊戯を繰り返す。ついには生き甲斐まで奪ってしまう。ベットは自分の運命に絶望した。そして、こんな連中への復讐を誓ったベットは、様々な計略、権謀術数を張り巡らせ、彼らを破滅へと導いていくのだった。そして、陰謀と欲望が交錯したその果てにあったものとは?

 

はい、以上のような作品です。

 近代小説というのは、だいたい17世紀頃からその形が出来てきて、18世紀のイギリスで一応の完成にたどり着き、19世紀のフランスで爆発的に開花したと、私は考えています。

 フランス文学などというと、「なんか難しいのかな?」とか、ちょっと敷居が高いような気がするかもしれないのですが、それは第二次世界大戦後のヌーヴォーロマンとかはスーパー難解ですが、19世紀フランス文学はとにかく読みだしたら止まらない面白さなのです。「小説でも読もうかしら?」みたいな時がございましたら、是非ともバルザック『従妹ベット』を思い出してください。

 

 さて、こんな感じで19世紀西洋文学の旅はつづきます。

 次回は、ディケンズ『荒涼館』を予定しております。

 よろしくお願いいたします。