ラグナリオ所属のえとやんこと江藤誠也(えとうせいや)です。セブン-イレブン店員歴22年、PROGRESSでセブン-イレブンといえば私、と勝手に自負しています。

 7月1日のホームルームで、セブン-イレブンからあっちゃんへ出版の話が来たという流れで、「セブン-イレブンのプライベートブランドは儲かる」という話がありました。きっと皆さんもセブン-イレブンに限らず、様々なプライベートブランドを利用されているのではないかと思います。今回はそんなプライベートブランドにまつわるちょっと面白い話を書いてみようと思います。

プライベートブランド(PB)とは

 プライベートブランド、略してPBは、主に流通業者や小売業者が主導してメーカーに製造を依頼する商品のことを言います。PBの逆はナショナルブランド(NB)と言い、洗剤の「アタック」などメーカーが企画・製造して販売する商品のことを言います。
 PBの代表格とも言えるのが、セブン&アイグループが販売している「セブンプレミアム」です。2007年に発売開始されたセブンプレミアムですが、実はセブンプレミアムが発売される前と後で、プライベートブランドの考え方や作られ方が大きく変わったと言っても過言ではないのです。

それまでのPB

 セブンプレミアム以前のPBは、「安かろう悪かろう」が一般的でした。NBの売れ筋商品に似せた商品を二流三流のメーカーに作ってもらう。それが一般的なPBの作り方でした。その上で、製造を依頼した商品はすべてを買い取り(メーカーの廃棄リスクがない)、広告を打たなくても自社ブランドとして店頭の目立つ位置を占めるように陳列されるわけですから、NBよりも安く販売することができ、さらに店は利益を取れる、そういう仕組みです。メーカーにとっては工場の空きラインを埋めて稼働率を上げることで効率化できたり、基本的に全数買い取りであるため在庫リスクがなく、作り手と売り手の双方にとってウィンウィンの関係だと言えます。

セブンプレミアムの誕生

 セブンプレミアムの構想が持ち上がった時、社内では反対の声が強くありました。それまでPBといえばスーパーマーケットなど安売り業態がつくり販売するものでしたが、セブンプレミアムの場合はグループのコンビニエンスストアであるセブンイレブンでも販売するという計画だったからです。同じPBであれば当然同じ価格で売ることになり、スーパーとコンビニの差別化が難しくなると考えられたからです。しかし、カリスマ経営者の号令のもと、セブンプレミアムの開発は進められました。流通業界から非常識と思われていたセブンプレミアムの戦略には、実は双方にとって大きなメリットがあったのです。

セブン-イレブンにセブンプレミアムを置くメリット

 まず、セブン-イレブンでセブンプレミアムを販売することは、ほぼ定価販売のNB商品に比べて同程度の商品が安く販売できるというメリットがあります。加えて、日ごろ安い商品を求めてスーパーへ足を運んでいる消費者が、スーパーでいつも購入している商品が近所のコンビニで同じ価格で買えると一度気づけば、高いというイメージで避けていたコンビニへ足を運んでくれるようになります。実際、東日本大震災の後の品薄の際、一度もコンビニへ行ったことがないという高齢者や主婦がコンビニへ来店し、セブンプレミアムを好んで購入されたことがセブンプレミアムの大きな成長のきっかけになりました。

スーパーにセブンプレミアムを置くメリット

 スーパーマーケット(イトーヨーカドーや福島のヨークベニマル等)側の利点としては、利益が取れる、これに尽きます。スーパーマーケットは薄利多売が命です。様々なコストをカットし、大量仕入れによってメーカーからリベートを獲得したり、売場の一等地を提供することでメーカーから販促費をもらうなどして、少しでも安く販売するのがスーパーマーケットの使命ですが、それゆえに利益率が数パーセントになってしまうことも珍しくありません。しかし、セブンプレミアム商品はNB商品のスーパー価格と同程度ながら、十分な利益をもたらしてくれるのです。

セブンプレミアムの開発コンセプト

 さらにそれまでのPBと一線を画していたのが、セブンプレミアムの開発手法です。セブンプレミアムは価格を目標の第一にするのではなく、しっかり価値のある商品の開発を第一目標にした上で、値ごろ感のある価格を設定します。
 一例を挙げると、お湯で溶かして作る粉末タイプのポテトポタージュスープの開発に際し、NB商品では価格を抑えるために香料を使用するものが多かったのですが、セブンプレミアムではより安心安全で価値の高いものを提供するために、香料は使わず原料のポテトを増量してより香りを出すことにしました。当然コストがかかりますが、セブン-イレブンの商品開発で培ってきた品質第一の姿勢がセブンプレミアムには投影されています。

セブンプレミアムの製造メーカーへのこだわり

 セブンプレミアムでは製造メーカーをすべてパッケージに記載しています。これもそれまでのPBではあり得ないことでした(多くのPBは販売者としてスーパーの運営会社等のみ記載していた)。コストを抑えるため、無名のメーカーに発注することが多いのがそれまでのPBでしたが、セブンプレミアムでは、大手メーカーで技術力はある、業界の2番手3番手のメーカーと手を組む手法がとられました。例えば、マヨネーズは業界2番手の味の素と共同開発をしてセブンプレミアムのマヨネーズを作るといった具合です。
 しかし、セブンプレミアムがブランドとして定着し、注目されるようになると、セブンプレミアムは業界トップのメーカーと手を組むようになります。そのメーカーが持つ技術、時には特許までを引き出して商品開発に生かすようになります。
 チョコモナカジャンボと言えば誰もが知っているアイスですが、実はモナカがパリパリの状態を保つためにモナカの内側にチョコレートがコーティングしてあり、その製法は森永の特許になっています。セブン&アイはそれに目をつけ、高級あずきモナカアイスやキャラメルモナカアイスなど、PBとは思えない高価格帯のモナカアイスを森永と共同開発で販売しています。メーカーの技術力とセブンイレブンで培った商品開発力を一体化して、より高い価値の商品を生み出せるようになったのです。
 さらに、絶対にPBを作らないとしていたコカ・コーラ社やカルビーといった会社もセブンプレミアムとなら手を組むようになり、缶コーヒーのジョージアとセブンプレミアムのダブルブランド商品や、カルビーの革命商品だった堅あげポテトもセブンプレミアム商品として出されるようなりました。セブンプレミアムとなら手を組んでもメーカーのイメージを毀損することなく、熾烈を極めるコンビニの売場(棚)獲得競争で優位になれると踏んでいるようです。

セブンプレミアム後のPB

 セブンプレミアムが大ヒットになった後、他社のPBの開発にも変化がみられるようになりました。品質を重視した商品や大手のNBメーカーと組んで新しい価値の商品開発が盛んに行われるようになりました。
 例えば、西友では「みなさまのお墨付き」という新しいPBブランドを企画し、主婦などの実際のお客様の評価データを取りながら商品開発をしています。また、イオングループの「トップバリュ」もとにかく価格にこだわる商品だけでなく、有力メーカーと組んで高品質な独自商品を販売するようになっています。

結論:セブンイレブンのプライベートブランドは儲かるのか

 プライベートブランド商品は利益率が高い、というのはスーパーマーケットの場合です。コンビニの場合はNB商品もそこそこの利益率で販売するため、PB商品で大きく儲けるという感じではありません。しかし、流行にあまり左右されない商品が安定的な価格で販売できることは大きなメリットですので、セブンプレミアムが無かった頃に比べれば、高齢者や主婦層など新たな顧客の獲得に寄与しており、そういう意味では確実に利益は増えているということができます。
 当然ながら、スーパーマーケットであるイトーヨーカドーでセブンプレミアムを販売すると儲かります。

最後に

 セブンプレミアム賞賛記事のようになってしまいましたが、課題はあります。
 一つは、セブンプレミアムの種類が膨大になったため、かならずしも高品質とは言い切れないハズレ商品が出る頻度が高まっているように思います(筆者の主観でしかありません)。
 そして、売場がセブンプレミアムで埋め尽くされることが、売場のマンネリ化につながっているということです。最初は統一感があって新鮮に思えた売場も、何度も来店するうちに飽きてきて、カラフルなメーカー商品をけることが生命線なので、イメージが統一されたセブンプレミアムだらけになると売場が飽きられる心配があります。これは、店員の技術でカバーは可能です。でもたまには、メーカーの鮮やかなパッケージの新商品もたまには買いたいですよね。

 今回はプライベートブランド、特にセブンプレミアムについて書かせていただきました。一つ一つの商品は、様々な人の思いや努力の結果お店に並んでいます。お店でプライベートブランドを見かけた時にこんな話があったな、と思い出していただけたら嬉しいです。